最終更新日:2023年8月15日
どうも、おばんです。QCたかです。
マネジメントシステムとSGDsの連携は、インパクトになりうるでしょうか。
「誰一人、取り残さない」ために、品質管理が起こせるインパクトとは何でしょうか。
この問題提起こそが、今後の品質管理の方向性を決めると信じています。
SDGsでインパクトを起こす
ボクが所属している品質管理学会には、複数の研究部会があります。
その1つである管理技術研究部会が無料で知識共有会を開催しています。
新型コロナの影響もあり、オンラインでの講習会が一般的になり、地方で暮らすボクでも、都会でしか開催されない講習会や勉強会にも参加できるようになりました。
今回参加した管理技術研究部会の知識共有会は、開催時間が夕方であり、企業で働いている人でも参加しやすい。
また、無料で開催してくれることも大きな後押しになります。
気軽に参加できるのは、本当にメリットです。
さらに、学会員でなくても、部会員でなくても参加できますので、興味のある方は問い合わせをしてみてください。
(ボクは部会員ではありませんが参加しました)
今回参加した知識共有会のテーマを要約すると
「SGDsをISOマネジメントシステムと同様に管理・運用する」
というものでした。
講師は、株式会社テクノファからご参加いただいた先生でした。
株式会社テクノファは、ISOコンサルタント企業であり、いろいろな講演会、セミナーなどを開催している企業です。
セミナーの資料は、そのまま説明することはできませんし、するつもりもありません。
このブログは、QCたかのブログですから、QCたか流にセミナーを受け得た知識と持論を、まとめていきたいと思います。
SGDsでインパクトを起こす・・・
このままでは抽象的ですね。
インパクト(inpact)は、一言でいえば「衝撃」です。
皆さんが一番好きなインパクトは、エヴァンゲリオンのセカンドインパクトでしょうか。
ボクは、インパクトドライバーも好きです。
「衝撃」なのですから、被衝撃物に対し何らかの力が加わり、その結果、何かしらの変化が起きる。
その何らかの変化をSDGsで起こしてあげよう、つまり、SDGsでインパクトを起こそう、ということです。
重要なのは、被衝撃物が「ヒト」であること。
そして、何らかの変化の対象は「ウェルビーイング(Well-being)」であることです。
ウェルビーイングとは、そのヒトにとって究極的に善い状態、そのヒトの自己利益にかなうものを実現した状態、と訳されます。
一言でいえば「幸福」です。
これらのことをまとめると、
「SGDsで、ヒトを幸福の状態に変化させる。変化させる行動をインパクトと言う。」
です。
インパクトはランク分けをする
インパクトはA、B、Cにランク分けされています。
A、B、Cは一見順列のようですが、それぞれ英単語の頭文字を取って、表現しています。
A(Act:処置)
すでにある良くない結果(ネガティブな状態)を改善し、そのものをなくす、軽減させる。
すでにある良くない結果(ネガティブな状態)を改善し、そのものをなくす、軽減させる。
例えば、炭素の排出量(ネガティブな状態)をゼロにする、減らす。
B(Benefit:利益)
今ある良い結果(ポジティブな状態)を維持・改善し利益を上げる。
今ある良い結果(ポジティブな状態)を維持・改善し利益を上げる。
例えば、太陽光発電の発電効率(ポジティブな状態)を向上させる。
C(Contribute:貢献)
新しく良い結果(ポジティブな状態)を生み出す。
新しく良い結果(ポジティブな状態)を生み出す。
例えば、レアアースを使用しない半導体(ポジティブな状態)を開発する。
このようなランク分けは、何のために行なわれたのでしょうか。
このランクは、国連開発計画(UNDP)、国際金融公社(IFC)、経済協力開発機構(OECD)、国連責任投資原則(PRI)など、9つの機関が共同で発足した「インパクト・マネジメント・プロジェクト(IMP)」で開発されたものです。
この合同機関によって作られたランクは、SDGsへの貢献度を分類し、企業の活動内容をわかりやすくするためのものであると考えます。
例えば、世界的に有名な自動車メーカーが、カーボンニュートラルの活動を行うことを大々的に展開しています。
企業側からすれば、Aランクの問題を解決し、ステークホルダー(利害関係者:顧客、地域、社員など)に対し、我々はSDGsにこんなに貢献しています!と宣伝ができるわけです。
ちょっと、B(Benefit:利益)あたりから「お金」の雰囲気が出てきましたね。
ボクたちの勝手なイメージですが、SDGsはクリーンなイメージがあります。
企業もそのイメージを大切にしますが、利用もします。
企業はクリーンなイメージを利用することで、ボクたち消費者が、その企業がクリーンな企業だと認識し、そんなクリーンな企業に対し信頼感を感じ、お金を使います。
それでは、SDGsへのアプローチが異なるA社とB社があった場合、ボクたちは、どちらがよりクリーンな会社なのか、どうやってSDGsへの貢献度を測れば良いのでしょう。
そして、両社をどのように評価すればよいのでしょう。
テレビCMをバンバンと流せる大企業だけが評価されてしまっては、不公平が生まれます。
それは、SDGsのゴールに反することになります。
これらの不公平を解決する目的で、ランク分けが開発されたのだとボクは考えます。
企業それぞれが、目指すランクを自身で設定でき、ステークホルダーに対して、それを明確に示せること。
そして、その活動を行う企業が他社と公平に評価される指標として、全世界共通で使用できるマネジメントシステムが必要になったのだと思います。
このマネジメントシステムを
「インパクトマネジメント」
という名称で、活動できるように開発されたのが「SDGインパクト基準」です。
インパクトをマネジメントする
マネジメントシステムと言えば、世界はISO9001シリーズやISO14001シリーズを多用してきました。
ですから、SDGsも、もれなく類似したマネジメントシステムになります。
マネジメントシステムの定義は、下記です。
マネジメントシステム management system
- 方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム(Q9000)
- いかなる組織にも(意識的か否か、文書化されているかどうかは別として)全般的なマネジメントシステムがあり、それを通して組織の目的が設定、実行、管理されている(ISO Guide72)
-クォリティマネジメント用語辞典(2004年発行 吉澤正 日本規格協会)より引用
「SDGインパクト基準」には4つの基準要素が設定されています。
- 戦略:組織のパーパス(存在意義)と戦略にSDGsを盛り込む。
- マネジメントアプローチ:組織の運営にSDGsを盛り込む。
- 透明性:上記1、2、ガバナンスにSDGsが盛り込まれていることを公開する。
- ガバナンス:組織のガバナンスの実践を通じたSDGsへのコミットメントを強化する。
要は、組織のすべての活動にSDGsを盛り込み、公開しろ、となります。
このような活動をすることで、SDGsに貢献している企業が見える化されます。
見える化されることで、投資家の目に留まります。
投資家の目に留まれば、お金が集まってくる。そして、SDGsが推進される。
世界は、この流れをいち早く作ることを目指しているのでしょう。
ここで、問題です。
この資本主義的な流れで、SDGsはうまくいくのでしょうか。
SDGsのゴールは、「ヒトがウェルビーイング」の状態になることです。
ここでの「ヒト」とは、誰を指しているのでしょうか。
SDGsをエサにカネが集まってくるシステムは、いったい誰がウェルビーイングになるのでしょうか。
誰のための「ウェルビーイング」か
素直に考えれば、SDGs関連の企業が起こすインパクトによって、新しい社会システムが生まれ、その恩恵を世界中の人々が受けることができれば、世界中の人々が「ウェルビーイング」になります。
しかし、世界中の人々が等しく恩恵を受けることなど「不可能だ」と思うのです。
今でもスマートフォンを持っていないヒトもいるでしょうし、すでにある水洗トイレのシステムも世界では使われていない地域があります。
世界中が平等にサービスやロイヤリティを受けられないから、「誰一人、取り残さない」のスローガンのもとに、SDGsとして問題が提起がされているわけです。
ボクは、このSDGインパクト基準、つまり、SDGsと企業の経済活動をパッケージングしてしまう活動が市場原理主義に基づく「投資家」が儲かる仕組みにしか見えません。
SDGsの本意を見失っているのでは?と思うのです。
投資家と投資家のご機嫌を伺う大企業が放つ、SDGsという甘い誘惑に、ボクたちは踊らされていてはいけない、と思うのです。
地球の資源は、誰のものでもありません。
地球の資産なのですから、勝手に掘って、水素や石油をタダで採っていいわけがありません。
そして、採掘する幼い手に、パンだけ与えていれば、済む問題でもありません。
企業は、これらを正当な金額で購入する責任があります。
そして、ボクたち消費者も、正当な金額を支払う責任があります。
このようなおカネの流れを新たに作ることが、本来のSDGsインパクトであるはず、とボクは思うのです。
この考え方は、日本の経済学者「宇沢弘文」により既に提言されているものです。
社会は「宇沢弘文」の提言をしっかりと受け止めるべき、と真剣に思います。
そして、おカネだけが「ウェルビーイング」なのか?とも思います。
ボクたちは、自分の労働時間をおカネに変えています。
いわば、「命」をおカネに変えているわけです。
大切な「命」をおカネに変えることが、「ウェルビーイング」でしょうか。
納期のひっ迫、上司からの叱責、精神的ストレス、肉体的疲労・・・
これだけの負担を自身かけて「命」を削りおカネに変えることが、「ウェルビーイング」なのか、と疑問に思うわけです。
もちろん、いろいろな企業が働くヒトへのケアを行っていることも理解しています。
ケアの恩恵を受けているヒトもいることも理解しています。
しかし、ケアという手法は事後処置です。
事後処置ということは「すでに発生している」わけですから、根本の解決ではありません。
根本を解決することに、ボクたちは向き合うべきだし、SDGsの名のもとに「強烈なインパクト」を打ち込む必要があるのだ、と思うのです。
それには、社会全体が「自己の利益優先主義」で行動するのではなく、「社会全体の利益優先主義」で行動する必要があるのだろう、と考えます。
SDGsのゴールは、そういうものだ、とボクは思うのです。
ここから先は、さらにジェレミー・ベンサムの「功利主義」へと話を広げたいと思うのですが、長くなりますので、この話はまたの機会としますね。
オススメ書籍
リンク
今回のテーマ:誰のための「ウェルビーイング」か、にピッタリな一冊だと思います。
経済学というと、アダム・スミスとかケインズ、ミルトン・フリードマンがすぐ思いつきますが、日本に優れた経済学者がいたことを忘れないで頂きたいと思います。