最終更新日:2024年2月3日
どうも、おばんです。QCたかです。
日本の悪い風習として「客先による立ち入り監査」があります。
昔、「隣の晩ごはん」と言って、夕飯どきに突然TVカメラが乱入し、他人様の晩ごはんを撮影、試食し、自由気ままに評価する番組がありました。
これに似たことを(突然ではないにしろ)企業は繰り返し行っています。
まさに余計なお世話。。。
今回は、こんなお話です。
最後まで、読んでいってくださいね。
客先監査は、不正の歴史
監査の歴史は長いです。
紀元前4000年前のエジプト文明からすでに実施されていたとのこと。
そして、監査は、現代まで脈々と続いていることから「人類の歴史には監査あり」と言えます。
ただ、ここで言う「監査」とは「お金に関わること」です。
つまり「会計監査」。
社会を動かすには、今も昔も変わらず多くのお金が必要です。
そのお金は、一人の「お金持ち」が出すわけではありません。
そこに暮らすみんなが少しずつお金を出し合うことで、等しくサービスを享受できる。
そのようなコミュニティを作ること、これが「社会」の本質ですね。
ですから、コミュニティで集めたお金というものは、コミュニティの共有財ですから、個人のお金より責任感のあるお金と言ってよいでしょう。
しかし、残念ですが、そのお金を許可なく使ってしまうヒトが現れてしまうのです。
そう、ボクたちヒトは不正をする生き物です。
どうしても、お金を目の前にしてしまうと偏桃体優位になり、正常ではいられなくなる生き物です。
そこに歯止めをかけるのが「監査」というシステムなのです。
「監査」とは、ヒトの行動から発生するエラーを正常に保つための維持パッチです。
いわば「監視の目」であり、防犯カメラや行動監視GPSと同じ目的を持っています。
この「監視の目」が社会をある程度秩序あるものに保ってくれるわけです。
ですから、「監査」は社会にとって必要なものと言えます。
- 計画通りにお金は使われたのか?
- お金を使った記録はあるか?
- その記録と現金は一致しているか?
これらのことを、定期的に「監査」することで、お金の使い方をちゃんと見てますよ、と監視することで「不正を防止しよう」というわけです。
これを、品質管理というフィールドに持ち込んだものが、「品質監査」になります。
品質に関する監査ですから、
- ルール通りに仕事をしましたか?
- 仕事をした記録はありますか?
- その記録と現物は一致していますか?
を確認していくことで、ものづくりは決められたルールに基づき、正しい作業で実施された証拠となるのです。
そして、この確認を定期的に行うことで、不正防止につながるのです。
品質監査の種類
品質監査は、主に2種類です。
- 内部監査
- 外部監査
内部監査は、同じ社員、同じ組織メンバーによる監査です。
多くは、社内で品質監査ができるヒトを任命し、そのヒトたちが、部門に対して監査を行います。
その監査は、最低でも年に1回行うことが一般的ですね。
外部監査には、主に2種類あります。
- 審査会社による監査
- 顧客による監査
※行政による監査もありますが、それは「不正」ありきなので割愛します。
審査会社による監査は、自分の組織がISO9001やJIS認定を受ける場合、その認定を受けられるシステムが確立されているかを、プロの審査員より確認してもらいます。
そしてそのシステムがISOやJISの要求に満足していれば、認定取得を受けることができます。
審査員のプロ資格は、認定登録制で実務経験がないと更新もできない鬼仕様。
審査員として、常に審査に携わっている猛者のみがなれるもので、QCたかのような「にわか監査員」とはケタ違いのスキルがあります。
次に、顧客による品質監査についてです。
これは言葉の通り、顧客から受ける品質監査ですが、これが本当に困ったものです。
お客様ですから、基本は要求を受けなければいけません。
圧倒的に、お客様優位の状態で、ボクたちは迎え撃つという状況です。
この防戦に勝利することなどはできず、良くて引き分け、負けることが普通です。
この場合、「負ける」と表現するのは「何かしらの改善をさせられる」という状況を指しています。
「改善できるのだから、メリットじゃないですか?」
その通りで、改善はメリットです。
問題は、「その改善は、本当に必要なことなの?」ということです。
ここが、客先監査の非常に難しいところになります。
カスタマーハラスメントはやめてくれ!
カスタマーハラスメントをご存じでしょうか?
カスタマー(顧客)によるハラスメントであり、カスタマー(顧客)という優位的立場から悪質なクレームを言うことです。
悪質なものになると「暴言」「長時間拘束」「土下座の強要」など恐ろしいものもあります。
信じられないかもしれませんが、客先監査においては、「来られる顧客の監査員の質」でまったく監査の内容が変わります。
- 温和な方
- クールな方
- 監査に対し博識な方
- 偉そうに上から目線の方
- 独自の理論を押し付けてくる方
- 早く帰りたい方
このバラツキが、客先監査の最悪なところです。
同じ外部監査でも、審査会社の監査員はプロですから、知識も監査のやり方も、ヒトとしての振る舞いも問題ありません。
勉強になることばかりです。
ただ、客先監査は、所詮、QCたかと同じ「にわか監査員」です。
知識も、監査のやり方も、ヒトとしての振る舞いも千差万別。
中には、下記を要求してくるカスタマー(顧客)もいます。
- 資料はすべて見せろ
- 現場は端から端まで見学させろ
- Excelで非表示になっている箇所を見せろ
- オレはこう思うから、変えろ
まさにクレームです。
他にも、最初から「指摘を考えてくる」顧客もいます。
「指摘をしないと遊んできた」と思われるのでしょうか?
そして、質問した内容のすべてに「指摘」をしてくるヒトもいます。
「指摘の数」が自身のボーナス査定につながるのでしょうか?
「指摘の数=改善の数」
ですからね。
指摘を受け改善するボクたちとしても、大変な労力です。
そして「指摘の質」も問題になります。
「本当に必要な改善」は指摘されることが大切です。
しかし「軽微な指摘」とか「改善要望」など、全体のシステムに影響のない範囲まで指摘し改善要望を出す必要はあるのでしょうか。
その「軽微な指摘」や「改善要望」に対して、監査を受けるボクたちとしては、指摘を受けた以上、改善せざるを得ません。
改善結果の報告を求められるからです。
品質監査の指摘は、だいたいは「管理体制の改善」です。
「管理体制の改善」は、ものづくりの改善とは異なり、「作業時間が早くなる」とか「品質が良くなる」といった、ものに直接効果を及ぼすものではありません。
むしろ、「管理に時間をかける」とか「ルールを増やして整合性を合わせる」といった「時間と工数をかけて品質を良くする」という改善になります。
ルールが増えれば、管理が増えます。
管理が増えれば、コストがかかります。
コストが掛かれば、どこかに金額を転換しなければなりません。
転換先として、製品の売値に上乗せできないのが日本の現実です。
そのため、コストアップした分は、企業努力で改善することが当たり前という社会。
昔から監査員は、被監査企業の風土・ルール・考え方を無視し、「日本の製造業は、こうあるべきだ」と型に嵌める指摘を繰り返してきました。
その繰り返しは波及し、別の企業、購買先、その先の購買先と連鎖を繰り返していきました。
その結果、日本は独自性を失い、右ならえ企業ばかりで、世界との競争力を失っていったのです。
この文化は断ち切らなければならない。
品質監査のあるべき姿勢
品質監査のあるべき姿勢として、
「被監査企業をリスペクトする」
ことです。
企業間の取引、規模に関わらず、他人にはリスペクトを表することが当たり前の姿です。
この場合の他人とは、法人格である企業、監査員、被監査者などすべてのステークホルダーを示しています。
この相互リスペクトの精神があってこそ、品質監査は成立するものと考えます。
そして、品質監査に対する基本ステップは下記3つです。
- ルールをシェアする
- ルール通り実施した記録をシェアする
- 記録の証拠をシェアする
中には「ISO要求」との整合性を確認したがる監査員もいますが、それは不要です。
ISOの認定取得を受けている企業であれば、ISO審査会社のプロ監査員のお墨付きをもらっています。
ですから、監査員が指摘をするのは、お門違いです。
監査員が疑問に思ったとしても、そこはISO審査会社の承認行為への疑問になるので、決して、被監査企業への疑問ではありません。
よって、疑問に思ったことを指摘することは間違えています。
そして、ISOを認定取得していない企業に対してであれば、ISOの精神は不要として企業を運営しているのですから、そもそもISO要求を求めること自体が間違えています。
こういう、基本的な常識を理解していない監査員が多くいることは、非常に残念でなりません。
監査は、監査員の知識や考え方を披露する場ではない。
まして、企業間の力関係にモノを言わせて、強制させる場でもない。
しかし、最近、中堅の立場で常識のある監査員に出会うことができました。
その監査員は、世界を代表する大企業の方です。
お互いにリスペクトし合えた素晴らしい監査を行うことができました。
このような大企業から、品質監査の状況を変える動きが見えると
「あぁ、日本はこれから変わっていけるな・・・」
と、希望が持てます。
大企業から、監査の常識を変えていかないと、いつまでも末端の企業は変わらず、日本が変わっていくことができません。
監査員一人ひとりの意識が変わったときに、日本は新たなステージに立つことができるでしょう。
みんなで、頑張っていきましょう!!