最終更新日:2月4日
どうも、おばんです。QCたかです。
工程能力指数を求めただけで満足していませんか?
求めた工程能力指数をイメージできていますか?
工程能力指数をちゃんと活用できていますか?
「工程能力指数をイメージで理解したい!」
今回は、そんな解説をしていきます。
ぜひ、最後まで見て行ってくださいね。
基本の4パターンを理解しよう!
工程能力指数には下記の2種類が存在します。
- Cp
- Cpk
これらは、下記4つのパラメータから構成されています。
- 正規分布
- 平均値 ※Cpは除く
- 標準偏差(ばらつき)
- スペック(公差)
そして、ベースとなる考え方は
「標準偏差(ばらつき)と比べて、スペックは大きいの?小さいの?」
です。
この標準偏差(ばらつき)とスペックの比率を「工程能力指数」と呼んでいます。
※
本記事で「工程能力指数」と表記したら「Cpk」を示しています。
詳細は後段で説明します。
キホン①【正規分布】
工程能力指数は「正規分布」を前提としています。
「正規分布」は「平均値」を中心に、左右対称に広がる山のような形をした確率分布です。
そして、左右に広がる山の「ある位置」を指定することで、指定した箇所の確率を求めることができます。
その山の「ある位置」を指定するものが「標準偏差(ばらつき)」になります。
キホン②【平均値+3倍の標準偏差】
この「ある位置」は「平均値+標準偏差」で示すことができます。
(逆方向に行けば「平均値ー標準偏差」です)
そして、工程能力指数は「標準偏差を3倍にしたもの」をベースとします。
つまり「平均値±3倍の標準偏差」ですね。
余談ですが、
この「3倍の標準偏差」は「3σ(シグマ)」と呼んでおり、品質管理手法ではよく使われる指標です。
なぜ「3σ(シグマ)」が指標なのかと言うと、
正規分布において「平均値±3σ(シグマ)」は、その範囲内である確率が「99.7%」と決まります。
逆に言えば「3σ(シグマ)」から外れる確率は0.3%しかない。
この「外れる確率」とは、つまり「スペック(公差)から外れる確率」ですね。
「スペック(公差)から外れる」ことを「不適合」と呼びますから、不適合から外れる確率、つまり「不適合率」が0.3%しかないので、工程は安定しているとしよう。
だから、その指標に「3σ(シグマ)」を使おう、というストーリーです。
さて、キホン①で説明した通り「正規分布」は「平均値」を中心に、左右対称ですから、ここからは、右側、つまり「平均値+3σ(シグマ)」の範囲だけでパターンを紹介します。
パターン①【スペック<平均値+3σ】
パターン①はスペックより「平均値+3σ」が大きいパターンです。
グラフの「青線はスペック」「オレンジ線は3σ」を示しています。
青線はスペックですから、スペックから外れた範囲、つまり青線より右側は不適合のエリアになります。
また、「公差との差」と記載していますが、これは「スペックー平均値」の意味であり、スペックと平均値の距離(絶対値)を示しています。
さて、
3σを示すオレンジ線は、スペックを示す青線より右側にありますね。
先ほどキホン②で「平均値±3σ」を安定状態の指標にしたのですから、不適合エリアに3σがあってはダメです。
つまり、この状態を安定状態とは言えません。
パターン②【スペック=平均値+3σ】
パターン②はスペックが「平均値+3σ」と一致しているパターンです。
グラフの示す色はパターン①と同じです。
3σを示すオレンジ線が見えていませんが、スペックを示す青線と一致し重なっているため、見えないだけです。
この状態は、安定状態と言えそうです。
パターン③【スペック>平均値+3σ】
パターン③はスペックが「平均値+3σ」より大きいパターンです。
スペックを示す青線が、3σを示すオレンジ線より、右側にありますね。
これは、3σからスペックが遠い位置にあるので、不適合率(スペックから外れる確率)がぐーっと低くなっていることを示しています。
つまり、パターン②【スペック=平均値+3σ】の状態よりも、さらに安定していると言えます。
ちなみに、このパターン③の状態を工程能力指数では「安定している状態」と定義しています。
先ほどのパターン②も安定しているはずなのですが、「まずまず」という表現になっています。
3σでは「物足りない」そうですよ。
まったく、導入したヒトは欲張りですね。
パターン④【スペック>>平均値+3σ】
最後のパターン④です。
これは、パターン③より、さらにスペックが右側にある状態です。
スペックは、3σからかなり離れました。
ここまで離れれば、不適合率は「ゼロ%」に限りなく近い状態です。
工程能力指数においては、「ここまででお腹いっぱい」であり、これ以上スペックと3σの距離を離さなくていいよ、という状態になります。
工程能力指数の指標をイメージしよう!
工程能力指数は、計算で求めた数字を「工程の安定度合い」の指標として定めています。
冒頭、工程能力指数は「標準偏差(ばらつき)とスペック」の比率といいました。
比率は、△対〇(△:〇)で表現できますし、△分の〇(△/〇)でも表現できます。
つまり、工程能力指数を求める式は、下記となります。
この比率を、指標として「工程能力指数」と呼ぶのですね。
工程能力指数の指標と比率の一覧は下記の通りです。
「工程能力が十分ある」範囲は「1.33~1.67」しかありません。
1.33以下であれば「もっと頑張って!」だし、
1.67以上であれば「いや、もう十分だし・・・」となります。
狭き門なのですね。
工程能力指数と不適合率の比較グラフ
工程能力指数は、標準偏差とスペックとの比較でした。
つまり、正規分布の確率とスペックの関係より、いかなる値でも不適合率を予測することができます。
表計算ソフト(Excel)からカンタンに計算することができますが、グラフになっていればわざわざ計算する必要がありません。
それでは、グラフを見てみましょう。
横軸が工程能力指数、縦軸が不適合率です。
ご覧の通り「工程能力指数が十分ある」とされる「1.33~1.67」は予測される不適合率が「0.003%~0.000%」です。
なので、10万個に3個以下の確率で不適合が発生する状態が良いとなります。
求めた工程能力指数の不適合率を予測したければ、このグラフを確認してもらえればいいです。
計算する必要がありませんからラクですね。
ぜひ、ご活用ください。
なお、「いや、オレは計算で求めたいんだ!!」という方は、下記のExcel関数から求めることができます。
不適合率=1-NORM.DIST(3*工程能力指数,1,0,TRUE)
合わせて、ご活用ください。
また余談ですが、
世の中、いろいろな業種があります。
少品種大量生産の工場もあれば、多品種少量生産の工場もあります。
なので、工場によっては一生をかけても10万個を生産しない製品もあります。
そんな中で「工程能力指数1.33でなければ受け入れられない」と言われることがありますが、それは如何なものかな?といつも考えています。
工程能力指数を、ひとつの指標とすることはよいことだと思いますが、指標に縛られすぎて、製品や生産個数に合わせて、フレキシブルな選択をするべきですね。
工程能力指数を正確に理解し、おかしな要求を受けない(しない)ように、みんなで気を付けていきたいものです。
工程能力指数の活用パターン
工程能力指数には、実はもう少しパターンが存在します。
先ほどまでは、正規分布が左右対称型の分布であることから、右側だけのグラフを示しました。
「左右対称なら左も一緒でしょ?」
と思いきや、左右対称なのは分布だけであって、スペックが平均値を中心に左右対称をしているわけではありません。
普通に考え、平均値がスペックの上側に寄っていたり、下側に寄っていたりすることは当たり前です。
この上下いずれかに寄っていることを「かたより」と呼んでおり、工程能力指数Cpkの「k」が示す意味になります。
平均値は上下のスペックにどれぐらい寄っていて、その寄った状態(スペックと平均値との差)と3σの比率はどの程度か、それを示したものが工程能力指数Cpkなのですね。
それでは、実際の事例を見てみましょう。
パターン⑤アウトとセーフ【片側Cpk1.33以下、片側Cpk1.33以上】
上側の工程能力指数Cpkは0.67しかありませんから、不適合率は2.22%。
下側の工程能力指数Cpkは1.33ですから、不適合率は、0.003%。
上下の不適合率を足し合わせ、工程としての不適合率は2.223%となります。
下側の工程能力指数Cpkは、0.003%と上側の2.22%に対しケタが一桁下ですから、実質「0%」とし足さなくてもよい程度ですね。
パターン⑥アウトとアウト【両側Cpk1.33以下】
上側の工程能力指数は、0.33しかありませんので、不適合率は16.11%。
下側の工程能力指数は、0.67しかありませんので、不適合率は2.22%。
上下の不適合率を足し合わせると18.33%となり、これが工程としての不適合率になります。
パターン⑦セーフとセーフ【両側Cpk1.33以上】
下側の工程能力指数Cpkは1.67で不適合率0.000%。
これはもう、言わずとも工程の不適合率は0.003%ですね。
限りなくゼロに近い、つまり「安定している」です。
工程能力指数Cpkは、値が小さいものを選択するが・・・
平均値とスペックにかたよりがある場合、上側と下側でそれぞれ不適合率を持つことがわかりました。
説明していませんでしたが、工程能力指数Cpkは「値が小さい方を選択する」というルールがあります。
パターン⑤⑥⑦を見てわかるように、工程能力指数Cpkの値が小さい方が不適合率が高くなります。
ですから、
「不適合率が高い方を選択しておけば間違いないでしょう」
という思想で「工程能力指数の値が小さい方を選択する」という考え方になりますが「パターン②アウトとアウト」のように、両側に大きい不適合率を含んでいるパターンがあります。
片側の工程能力指数Cpkだけを求め、「工程能力指数は○○なので、工程の不適合率は○○%です」という言葉には、ウソが含まれる可能性があります。
片側の不適合率を無視しているわけですからね。
工程能力指数の公式として、下記のような式を示している教科書がほとんどです。
この式は「min」とありますので「小さい方を選べ」となります。
必要となるアウトプットを式で現せば、もちろんそうなのですが、この式では大きい方の不適合率を「捨てて」います。
「捨てる」ということは、工程の正しい不適合率を把握していないことになります。
ですから、
工程能力指数Cpkという数字だけに囚われていると、大事なものを見失います。
十分に気を付けていきましょう。
工程能力指数Cp
冒頭、工程能力指数には、
- Cp
- Cpk
の2種類があると言いました。
しかし、ここまでの議論はすべて「Cpk」について述べてきました。
なので、ここでCpについても説明するのですが、CpはCpkと異なり「平均値とスペック
公差)との差」の概念がありません。
分母は、Cpkと異なり「平均値を中心にして左右両側の標準偏差」を検討しますので「3σ+3σ=6σ」となります。
分子から「平均値」が消えているのがわかります。
このように、位置の要素がふくまれないため、単純に「ばらつきと公差の比率」だけになります。
パターン⑧スペックから完全離脱したCp
これは、公差幅と分布が全くかけ離れた状態です。
今まで見てきたCpkでは当然「0」です。
ムリヤリ計算すると「マイナス」の値になり、意味不明となります。
ところがCpの場合、分布の位置は不問ですから「標準偏差とスペックの比」は結果として1.33となります。
このように、Cpは、スペックとの関係とは無縁ですから、Cpから不適合率を求めることはできません。
パターン⑨CpとCpkの完全一致
分布の平均値がスペックの中心値と完全一致した場合、CpとCpkは一致します。
パターン⑧と見比べて、Cpkが位置によって値が変わっていますが、Cpは変化していません。
これが「Cpが位置にによって値が変わらない」ということです。
そして、このパターンから理解することは、CpとCpkの関係性は、必ず「Cp≧Cpk」が成り立つということです。
Cpkの最大値はCpであり、Cpを越えることはありません。
ですから、お互いを計算し逆転しているようであれば、それは計算が間違えていることを疑いましょう。
CpとCpkの使い分け
Cpkは、平均値とスペックの位置から不適合率を特定することができます。
Cpは、ばらつきとスペックの比較をすることができます。
工程改善には、「平均値をずらす」か「ばらつきを抑える」が基本です。
平均値をどれだけずらせばよいのか、これはCpkにて把握することができます。
しかし、平均値をずらしたとしても、ばらつきがスペックを越えていては、十分な効果が得られません。
そのため、事前にCpを確認しておくことで、平均値をドンピシャ公差の中心に動かした際のCpk最大値が確認できます。
この状態でも、Cpkが低いのであれば、平均値をずらしただけでは不十分、ばらつきを押さえなければいけない、というアクションに切り替えることができます。
このように、CpとCpkはお互いを補完する役割を持っています。
計算も難しくはないので、両方計算するようにしましょう。
まとめ
工程能力指数の全パターン紹介と不適合率の解説をしました。
- 工程能力指数はCpとCpkがある
- 正規分布に従う
- 平均値+3倍の標準偏差とスペックの比較
- 工程能力指数から不適合率が予測できる
- 全部で9パターン
- Cpはばらつきを、Cpkはかたよりを教えてくれる
数字の意味が訳も分からず使っていたヒトも、意味がわかれば今までよりも自身を持って使って頂けます。
一見、難しそうですが実際はシンプルなので、難しいことはありません。
分かったヒトから、ドンドン使っていきましょう。
オススメ書籍
リンク
工程能力指数の本と言ったら、コレでしょうね。
区間推定まで説明してくれる本ですが、そこまで読むとちょっと「難しい・・・」と感じます。
QCたかが説明した本記事の方がよっぽどわかりやすいと思いますよ。