最終更新日:2024年3月10日
どうも、おばんです。QCたかです。
品質管理教育で成果を出していますか?
みんなやる気に満ち溢れていますか?
実際は成果も見えないし、やる気があるのか、ないのかも判断ついていないのでは?
やるからには、成果も出して、みんなのやる気が溢れていると嬉しいですよね。
今日は、こんな話です。
最後まで見て行ってください。
意識の乖離「TQM V.S ヒト」
日本品質管理学会は、品質管理教育の指針を『日本品質管理学会規格「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)』として示しています。
その4.2項『品質管理教育におけるトップの役割』の一部を下記に抜粋します。
品質管理教育は、個人だけに任せておくべきものではなく、組織の責任で実施する必要がある。他方、このような環境の中で、組織が必要とする能力の向上に努めることは個人の責務であり、(中略)トップは、このような組織と個人との互恵関係を実現できるように支援していくことが大切である。
日本品質管理学会規格「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)より抜粋
日本品質管理学会ではTQM(総合的品質管理:Total Quality Management)を推奨しています。
そのバックボーンを前提とし「品質管理教育」は
「組織も個人も責任持って教育と勉強をやろう!そしてWin-Winの関係になろう!」
と言っています。
それに対し、ヒト側の実態は残念なものです。
- 「全体の約4割」が働くことに無関心(パーソル総合研究所「働く1万人成長実態調査2017」)
- 「全体の約7割」が自分で学ぶことをしない(リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」)
働くことに無関心なヒトの特徴は、下記です。
- 将来の目標やプランを持っていない
- 勉強する習慣や時間管理ができていない
- 集中できない
- アウトプット、フィードバックをしない
- 責任感や自信がなく、失敗を恐れる
- 仕事や勉強が楽しくないし、やりがいを感じない
- コミュニケーションが苦手で孤立する
- ネガティブに考えて、自己否定する
これらの原因がすでに既知なのですから、そのまま、対策をすればよいですね。
「なぜなぜ分析」と一緒です。
- 将来の目標やプランを持たせる
- 勉強する習慣や時間管理をさせる
- 集中する場を準備する
- アウトプット、フィードバックをさせる
- 責任感や自信を持たせる
- やりがいを感じさせる
- コミュニケーションを取らせる
- ポジティブに考え、自己承認させる
結局、これらは「やりがい」という言葉に集約されます。
【やりがい】
仕事や活動に取り組む際に得られる満足感や充実感
- 目標が達成できたとき
- よい評価が得られたとき
- 困難を乗り越えたとき
- ヒトの役にたっていることを実感したとき
- 自己の成長を感じられたとき
つまり、「品質管理教育」は「『ヒトはやる気がない』ことを前提とし『やりがいを持たせる』育成型ゲーム」であることを理解しましょう。
「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)は「全員が言われた通りやる」いわゆる「平均人」を前提としていますので、この実態との乖離を理解していないと、効果的な教育ができず成果が出せません。
前提はしっかりと理解しておきましょう。
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キャリアプランを一緒に考えよう
「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)は「キャリアプラン」を推奨しています。
キャリアプラン
組織を構成する一人ひとりが、自ら持つ無限の能力を発掘し、これを組織活動に活かすことで業績に貢献し、人としての幸せを獲得していくためにどのようなキャリアを積ませればよいか(積めばよいか)を示したもの
日本品質管理学会規格「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)より抜粋
「キャリアプラン」は、「個人がやりたいこと」を学ばせてあげることが重要です。
個人が何をやりたいのか、ちゃんと面談をし、お互い納得のいく形で決めていきましょう。
品質管理教育だとしても「品質管理の手法」に限る必要はありません。
品質管理教育は、TQMがバックボーンです。
あらゆる学びは、必ず品質管理に活かせますので、「えっ!?そんなコト!?」と否定してはいけません。
とは言え、あまり離れすぎていても許可してよいものか困ってしまうので、ある程度ターゲットは絞っておきたいもの。
仕事に活かせそうなジャンルをまとめ、準備しておくといいでしょう。
一例を示します。
- 品質管理
- 品質保証
- 製図、作図
- PC操作
- プログラミング
- デザイン
- 経営
- 心理学
- 語学
- 技能講習
- フォークリフト
- 5S
これらの学びは「資格取得」というアウトプットが明確にあります。
- 品質管理:品質管理検定(QC検定)
- 品質保証:ISO内部監査員など
- 製図、作図:CAD利用技能者など
- PC操作:マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)など
- プログラミング:ITパスポートなど
- デザイン:色彩検定(カラーコーディネーター)など
- 経営:経営学検定など
- 心理学:心理カウンセラーなど
- 語学:TOEIC、日本語検定など
- 技能講習:クレーン、玉掛など
- フォークリフト:フォークリフト運転者
- 5S:整理収納アドバイザーなど
学びのモチベーションは、やはり「形」として残すことが重要で、学ぶ側のやりがい、そして組織側の評価ポイントにできます。
これこそが、Win-Winな関係と言えるでしょう。
ヒトを組織の財産にする
キャリアプランは「個人が学びたいもの」でした。
つまり「ご褒美」です。
ですが、組織側としては「ご褒美」をあげたのだから「見返り」も欲しいわけです。
「見返り」は「組織側が学んで欲しいこと」ですね。
「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)では、学びを4つに区分しています。
- 組織・部門教育
- キャリアプラン
- 階層別・分野別教育
- 研修プログラム
組織側は、これらを組み合わせ、教育を計画します。
【組織・部門教育】
一般的な教育、品質管理に関する教育になります。
一般的というのは、
- モラル
- ビジネスマナー
- コンプライアンス
などです。
品質管理に関する教育は、TQMに関する内容です。
- 品質の価値観・原則
- 品質保証
- 方針管理
- 標準化・日常管理
- 小集団改善活動(QCサークル)
- 問題解決
- 手法・数理
品質管理に関する内容は、範囲が広く覚える項目が多いです。
また、OJT(On-the-Job Training)を通じ、実際に経験をし学ぶ項目も多いもの。
一朝一夕では身に付かない項目もあるので、長い期間を想定した計画が必要です。
キャリアプラン
先ほど説明したキャリアプランについて補足をします。
キャリアプランは将来なりたい役職や職種も含みます。
ですから、個人の経験年数が考慮に含みます。
- 新入社員時として1年のプラン
- 担当者として2~5年のプラン
- 中堅社員として6~20年のプラン
- 責任者として15年~のプラン
その時その時で「必要な」「求められる」スキルを学べるようにコーディネートしていくとよいでしょう。
階層別・分野別教育
階層は職位を示します。
- 経営者
- 管理者
- 監督者
- 一般従業員
分野は、挙げればキリがありませんが、「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)では、
- マネジメント力
- 問題解決力・データ分析力
- 組織人スキル
- 固有技術・技能
を挙げています。
これをマトリクスで表し、各階層に対応した分野の教育を計画します。
階層別分野別教育の例 「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)より引用し作成 |
研修プログラム
学び場を計画的に行うため、教育をユニット化したもので、受講者やその責任者に選択させます。
カリキュラムの一例を示します。
- 経営者2日間コース:品質経営概論、実践、経営者の役割など
- 管理者6日間集中コース:TQM活動、人材育成、放心管理、品質保証活動など
- 一般職2日間コース:品質管理とは、QC的考え方、手法など
ただ、これを実施するには専門の教育組織が必要になり、なかなか準備できる組織は多くないですね。
外部機関での研修プログラムを受けるなどで、教育を計画していきたいものですね。
個人別教育計画書でPDCAを回す
ヒトの教育は、1年で終わるものではありません。
「長い間、成長と共に活躍してもらいたい」
と思うことが組織側の必須な思考です。
それを形にするものが「個人別教育計画書」です。
個人別教育計画書は
- 現状のスキルと目標とするスキル
- 取得を目標とする資格
- 年間の計画
- 中長期的な目標
を含めます。
そして、毎月更新し、可能な限り面談で実績を確認しましょう。
進捗状況、モチベーションなどを確認し、方向性がズレていれば修正が必要です。
中長期的な数年先の計画もあればベストですが、実際に計画とするには少し情報が少ないと思いますので、年度の計画だけで問題ないでしょう。
この計画を最終的にチェックし、来年度以降の計画に反映していきましょう。
この活動をPDCAと呼びます。
- Plan(計画):個人別教育計画を作成する
- Do(実施):教育を行い、毎月の進捗を監視する
- Check(分析):1年間の活動を振り返り、評価・分析する。
- Act(改善):来年度に向けて、ブラッシュアップする内容を決める
そしてまた、「Plan(計画)」を立て、1年間の活動を行っていく。
このスパイラルアップの活動を続けていくことが重要なのです。
個人別教育計画書の一例 |
まとめ
日本品質管理学会規格「品質管理教育の指標」(JSQC-Std 41-001:2017)より、品質管理教育の方法を紹介するとともに、前提となる「ヒトはやる気がない」ことが前提にあることを説明しました。
そのうえで、ヒトに『やりがい』を持たせるため「やりたいことをやらせてあげる」取り組みとして「キャリアプラン」を計画することを推奨しました。
組織側としても、一般知識や専門技能、品質管理手法の教育を行う必要があります。
これらの教育を「個人別教育計画」としてパッケージングし、PDCAサイクルを活用し、ヒトを財産として育てていく活動が重要です。
個人個人の方向性や個性を大切にしてあげてください。
押し付けるだけでは、離れるばっかりです。
個人と組織がお互い歩み寄ることが、本当のWin-Winの関係と言えるでしょう。